大倉邦彦の落款印②-「三空」
- 2025.03.11
「三空」
「三空」は、大倉邦彦の雅号です。
大倉自身がその由来について語った文章はありませんが、次のような文章があります。
名聞も、利欲も、勝他も、自分の手許に引き寄せようとすれば、他人も亦それを引き寄せようとするから、力が平分して、幾ら努力しても効果はあがらない。その反対に、世の為め人の為めと、即ち求める者に与えられずして、尽すものに与えられることとなるのである。そこで、三欲は求むべきものにあらずして、与えられるべきものである、と云う結論に到達する。(大倉邦彦『日本産業道』)
①人に知られよう、自慢しようという「名聞」、②自分の利益だけをはかろうとする「利欲」、③他者よりも優れることに偏って執着する「勝他」。
この「三」つの欲を断ち切って「空」の境地に立つ、そういう大倉邦彦の理念を表しているものと考えられています(西岡和彦「「三空」と「宇宙心」」)。
研究所には、4種類の印章が残っています。