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大倉邦彦の落款印④-「自得」

2025.03.26

「自得」

ここからは研究所に1種類のみが残っている落款印を紹介していきます。

007348-32「自得」(朱文印).jpg

雅号「三空」についで、よく使用されている落款印です。


その由来は定かではありませんが、『孟子、離婁下』にある文章に基づくと思われます。

【原文】
孟子曰、君子深造之以道、欲其自得之也。自得之、則居之安。居之安、則資之深。資之深、則取之左右、逢其原。故君子欲其自得之也。

【訓読】
孟子曰(いわ)く、君子の深く之(これ)に造(いた)るに道を以てするは、其の之を自得(じとく)せんことを欲すればなり。之を自得すれば、則ち之に居(を)ること安(やす)し。之に居ること安ければ、則ち之を資(つ)むこと深し。之に資むこと深ければ、則ち之を左右に取るも、其の原(みなもと)に逢ふ。故に君子は其の之を自得せんことを欲するなり。

【解釈】
孟子が言うに、「君子たる者が道を求めて努力するのは、道を自分のものとしてに十分体得したいと思うからである。道を自得すれば、安らかに落ち着くことができる。かく安定すれば、その体得した道をさらに深く究めることができる。そして道を深く究めたら、左右前後、すべての行動が道に当てはまることになる。だから、君子は道を自得しようと思うのである。」

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