第09回公開講演会(愛知大学共催)/『源氏物語』千年の魅力~紫の上の「うつくしさ」~
第9回公開講演会(愛知大学共催)
『源氏物語』千年の魅力~紫の上の「うつくしさ」~
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講 師:和田明美(愛知大学文学部教授)
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日 時:平成23年(2011)7月2日(土)
『源氏物語』は、今をさかのぼること千年、紫式部によって書かれた長編の王朝物語です。特に正編(一部・二部)は、光源氏と関わる女性たちの思考や思惟を深く掘り下げており、一人一人の個性やその内奥に迫りつつ、平安貴族社会を生きた人間のありようを鮮やかに表現しています。
なかでも紫の上は、「紫のゆかり」として十歳の頃、北山で光源氏に見出されます。性質・容姿のみならず、知性・教養においても藤壺にまさるとも劣らぬ理想的な女性に育ち、やがて源氏と結婚します。しかし、光源氏の愛にすがりながら生きた紫の上の人生は、必ずしも幸福とは言えません。女三宮降嫁の後は、思うに任せぬわが運命を嘆きつつ、「置くと見るほどぞはかなきともすれば......」と詠じた後、四十三歳の生涯を閉じるのです。
この講演では、光源氏とともに生きた紫の上の人生の軌跡を辿りながら、年ごとに増しゆく外面的「うつくしさ」の深層にひそむ、女としての悲しみや苦悩を読み解いてゆきます。