第●回大倉山講演会/禅と『葉隠』と大倉邦彦
平成18年度「大倉邦彦とその時代」/第2回
禅と『葉隠』と大倉邦彦
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講 師:納冨常天(総持寺宝物館館長)
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日 時:平成18年(2006)9月16日(土)
大倉邦彦は佐賀藩時代からの伝統的な勤倹尚武の環境に生れ育っています。とりわけ佐賀中学時代の葉隠四誓願に基づく教育は、1年下にいた下村湖人の『次郎物語』などを通して、その思想形成に大きな影響を与えたことがわかります。
後年、目黒の富士見幼稚園や、郷里に農村工芸学院を設立したのをはじめ、最後に大倉精神文化研究所を創設して、研究や研修会、さらには坐禅会などを開催していますが、これらは四誓願の一つ「大慈悲を起し人の為になるべき事」を実践したものといえましょう。
また禅への関心は、天竜寺管長由利滴水について修行した東亜同文書院初代院長根津一によるものでした。その後、小浜発心寺の原田祖岳に参禅していますが、これは『正法眼蔵』などを著した永平道元に親しむ切っ掛けになっています。
ここでは禅や『葉隠』による大倉邦彦の人間形成と、昭和初期における農村の振興や、女子に対する職業教育を目的とした農村工芸学院の、禅に基づく経営についてお話ししたいと思います。