第162回 みんなで楽しい子育て
- 2012.06.01
文章の一部を参照・引用される場合は、『わがまち港北2』(『わがまち港北』出版グループ、2014年4月)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。
横浜市の人口は、戦後一貫して増加してきました。市の推計によると、今後もしばらくは増加し、市全体としては2020年に、港北区は2040年にピークを迎えると見込まれています。しかし、すでに人口減少に転じた区もありますし、4月の新聞報道では、市の総人口が減少に転じるのが少し早まりそうだとの観測がなされています。ただし、港北区は転入者も出生も多く、まだしばらく増加傾向が続きそうです。
かつての港北区域は農村地帯でした。大家族が当たり前だった頃は、両親が野良(のら)仕事をしている昼間、小さな子供の世話をするのは祖父母の役割でした。しかし、田植えなどの農繁期は家族全員で田に出ましたから、お寺に臨時の託児所を開設したこともありました。たとえば、新吉田の浄流寺(じょうりゅうじ)に開設されていた託児所の、昭和初期の写真が残されています。
核家族化が進んだ現在でも、子供を育てるのは親だけではありません。祖父母に代わって、地域の大人達が、子育て支援に大勢係わっており、行政もそれを支援しています。転入してきた方は、慣れない土地での子育てに奮闘することになりますし、長く住んでいても、核家族化により、子育ては大変になっています。そうした人たちを支援する団体や場所があります。
たとえば、横浜市は、未就学児やその保護者が遊んだり交流するスペースとして、平成18年(2006年)から地域子育て支援拠点を各区に設置しています。そのモデル事業として最初に開設されたのが、大倉山3丁目の「どろっぷ」です。どろっぷには、昨年10月14日に野田総理や蓮舫(れんほう)大臣も視察に訪れています。
どろっぷでは、小児(しょうに)救急にまつわるエピソードを盛り込んだ『ココめ~る川柳(せんりゅう)カルタ』を3月に作りました。「き 休診日 熱出し相談 #7499」、#7499は横浜市小児救急の相談ダイヤルです。いざという時に役立つ情報が、カルタ遊びをしながら覚えられます。
どろっぷを運営しているのが、NPO法人びーのびーのです。平成12年(2000年)にNPO法人となり、この年から菊名で「おやこの広場」を開いています。NPO法人びーのびーのが2011年12月に発行した『びーのびーのおでかけマップ』は、タイトルがマップとなっていますが、子育てに関する各種情報がてんこ盛りで、役立つ本です。同じく、びーのびーの制作の『ココマップ』(港北区社会福祉協議会発行)も最近新しくなりました。
筆者がイクメン(子育てパパ)となった15年前は、インターネットを通じて子育て情報を得ることは考えつきませんでしたが、港北区子育て応援メールマガジン「ココめ~る」に登録すると、子供の年齢や住んでいる地域に特化した情報が定期的に配信されます。また、港北区役所のホームページには、「港北元気っ子育て情報」のページがあり、実にたくさんの情報が掲載されています。たとえば、その中の「パパのお留守番サイト」には、電子レンジだけで作れるお椀1杯のみそ汁など簡単料理のレシピまであって、ちょっと感動ものです。お留守番パパだけでなく、少人数世帯ならいつでも役立ちそうです。
さて、昔なら、地域の民話や昔話を祖父母が聞かせてくれたのですが、今では、おはなし会があります。
4月22日、菊名地区センター前の広場に、講談社主催の「本とあそぼう全国訪問おはなし隊」のキャラバンカーが来ました。当日は、今にも雨が降り出しそうでしたが、広場に止まった車の前に広げられたシートには、たくさんの親子が集まって、楽しそうに絵本を読んでいました。筆者も、トラックに積んである550冊の絵本から、浜田桂子『ぼくのかわいくないいもうと』を読みました。その後、菊名地区センターで開かれたおはなし会も、座る場所が足らなくなるほどの盛況でした。最初は騒がしかった会場が、絵本を開きおはなしを始めたとたんに、静まりかえり、子供たちが食い入るように集中したのは驚きでした。小さな子供向けの絵本が、実は大人でも楽しいことを再発見。キャラバンの隊長が、「ずっと本が好きなお友達でいてくださいね」と挨拶していましたが、最近趣味の読書をしなくなった筆者も、ちょっと心動かされました。
港北図書館でも、「一土(いちど)のおはなし会」「えいごdeおはなし会」「紙芝居の日」など様々な企画をしています。おはなし活動(素ばなし、紙芝居、読みきかせなど)をしている人たちが交流する、港北おはなしネットワークも動き出しました。最近新店舗へ移転した日吉の「こどもの本のみせ ともだち(通称、ともだち書店)」は、絵本児童書の専門店で、読み聞かせボランティア用の貸出コーナーもあります。
地域の子育て支援活動を上手く利用すれば、もっと楽しい子育てが出来そうです。
記:平井 誠二(大倉精神文化研究所研究部長)
(2012年6月号)