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大倉精神文化研究所

横浜市港北区地域の研究

第11回 大倉山記念館の吹付け仕上げ─大倉山はじめて物語、その3─

2017.02.15

文章の一部を参照・引用される場合は、『わがまち港北3』(『わがまち港北』出版グループ、2020年11月)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。


 横浜市の成人式は、市内の全成人が新横浜三丁目の横浜アリーナに集まる日本一大規模な成人式です。その席で、今年(2017)は『出港』と題したプログラム兼用の小冊子が配布されました。その中に、実行委員オススメのYOKOHAMA Photo Spotとして、18区から1枚ずつの写真が掲載されていました。港北区は大倉山記念館の写真でした。
 その大倉山記念館にも、未だ知られざる日本で初めてがあります。外壁の吹付け塗装仕上げです。今では一般の家でもよく使われるごく当たり前の工法ですが、日本で初めて施工に成功したのが1932年竣工の大倉山記念館だったのです。日本建築仕上材工業会の『会報』創立50周年記念号には、このことからだけでも、大倉山記念館は記念すべき貴重な建物であると記されています。
 その時の白セメント吹付け塗装膜は、残念ながら52年後の1984年に改修工事で全て剥がされてしまい、現存しません。しかし、1984年の塗装膜片は、2012年の改修工事で剥がした時に、横浜市の許可を得て大倉精神文化研究所で資料登録して大切に保存しています。(S.H)

(2017年2月号)

付記
阿久沢武史「日吉第一校舎ノート(1)1923~1934」(『慶應義塾高等学校紀要』第45号、2014年)によると、昭和8年(1933)に起工した日吉キャンパスの第1校舎の外壁もコンクリート打放しの上に白セメントスプレー吹付け(ウオーガン)仕上げとなっていました。
2020年1月23日に阿久沢武史先生よりいただいた電話によると、第1校舎の外壁はその後上に何度か塗り重ねているが、現在も下地に白セメントの吹付けが残っているとのことでした。

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