閉じる

大倉精神文化研究所

横浜市港北区地域の研究

第31回 樽は綱島─不思議な菖蒲園─

2018.10.15

文章の一部を参照・引用される場合は、『わがまち港北3』(『わがまち港北』出版グループ、2020年11月)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。


 樽町には、菖蒲園前という名前の交差点やバス停があります。直ぐ脇に樽町しょうぶ公園もありますが、周囲に菖蒲園は見当たりません。実は80年余り前には、その辺りに東急電鉄が作った菖蒲園がありました。
 東急電鉄は、東横線電車の乗客を増やすために、昭和8年に菖蒲園を開園しました。3,000坪の園内には、花菖蒲、アヤメ、カキツバタ、アイリス等数十種5万株が植えられていました。
 東急の古い資料を見ると、正式には「綱島菖蒲園」という名前だったことが分かります。綱島駅から行ける菖蒲園だったからです。どこの町にあるかよりも、最寄り駅がどこかを重視しているところが、いかにも鉄道会社らしいネーミングですね。ちなみに、隣の大曽根町には「大倉山天然スケート場」がありました。誰が命名したのかは分かりませんが、大曽根にあっても最寄り駅が大倉山駅だったから名付けられたものです。
 さて、この綱島菖蒲園ですが、昭和13年に鶴見川の大洪水が発生し全て流されてしまい閉園に追い込まれます。菖蒲園は、短命に終わりましたが、その名は今でも樽町に生き続けています。(S.H)

(2018年10月号)

大好き!大倉山の記事一覧へ