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大倉精神文化研究所

横浜市港北区地域の研究

第4回 熊野の神様と"いの池"の片目鯉─むかし話、その1―

2016.07.15

文章の一部を参照・引用される場合は、『わがまち港北3』(『わがまち港北』出版グループ、2020年11月)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。


 むか~し昔、大和国(やまとのくに)から熊野の神様が、はるばる港北の地にやってきました。その時、神様は悪者と戦い、片目を弓で射貫かれてしまいました。それを見た"いの池"のコイが、自分の目玉を1つ神様に差し出して助けました。それ以来、いの池に棲(す)むコイは片目になりました。
 ある時、盗っ人がいの池からコイを盗み出し、市場へ売りに行きました。コイを買おうとした人がよく見ると、片目がありません。いの池から盗まれたコイだと分かり、大騒ぎになりました。盗っ人は逃げ出して、コイをいの池にそっと戻しました。
 こうして、いの池には今でも片目のコイが棲んでいるのです。
 熊野の神様は、師岡熊野神社に祀られました。ひらがなの「い」の形をしたいの池や、熊野神社は、200年も前に『江戸名所図(ず)会(え)』に描かれた姿のまま、今日も木立に囲まれて静かにたたずんでいます。
 境内には、どんなに日照りが続いても水が涸(か)れないという"のの池"もあります。お参りした時に探してみてください。(S.H)

(2016年7月号)

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