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大倉精神文化研究所

横浜市港北区地域の研究

第51回 観光案内の鳥瞰図―大倉山はじめて物語、その14―

2020.07.15

文章の一部を参照・引用される場合は、『大倉山STYLEかわら版!』(令和2年7月号)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。


 昭和7年のことです。神奈川県観光連合会は、関東大震災から復興を遂げた神奈川県の宣伝をしようと「神奈川県観光図絵」の出版を企画します。そして原図の作成は、「大正広重」と呼ばれた鳥瞰図絵師の吉田初三郎に依頼しました。
 初三郎は、縦80㎝×横420㎝程もある大画面に神奈川県全域を描きました(「神奈川県鳥瞰図」)。大胆なデフォルメで、絵の端には関門海峡の下関、門司まで書き込んであります。
 当然港北区域も描かれています。まず目に付くのは、東京横浜電鉄線(東急)の日吉・綱島・菊名、横浜線の小机の4駅です。観光地としてアピールしているのは4ヵ所、慶大、綱島温泉、大倉精神文化研究所、小机城址です。名前は書かれていませんが、菊名池も描かれています。
 小机城址は江戸時代からの名所ですから当然でしょう。綱島温泉も有名になりつつありましたが、この時期はまだ、最初に開発された鶴見川の南側(第32回参照)が旅館街の中心でしたので、樽町交差点辺りに湯けむりを描いています。
 特徴的な塔屋を持つ建物が描かれた大倉精神文化研究所はこの年オープンしたばかりですし、慶應義塾大学にいたっては昭和4年に進出が決まっていましたが、日吉に移転開校するのは2年後の昭和9年です。なぜか未来も描かれています。
 神奈川県立歴史博物館の武田周一郎学芸員によると、吉田初三郎は京都に工房を構えていたが、調査員を派遣して、計画も含めた最新の情報を調べて、観光地としてこれから宣伝したい場所を書き込んでいるとのことでした。(S.H)

『大倉山STYLEかわら版!』(令和2年7月号)掲載絵図のキャプション
「神奈川県鳥瞰図」の港北区あたり、原画はカラーでとてもキレイです。(神奈川県立歴史博物館所蔵、富士ゼロックス株式会社画像提供)

(2020年7月号)

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