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大倉精神文化研究所

横浜市港北区地域の研究

第71回 全国のおおくらやま、ふとお―地名のナゾ、その7―

2022.07.15

文章の一部を参照・引用される場合は、『大倉山STYLEかわら版!』(令和4年7月号)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。


 前回の続きです。港北区の大倉山、その語源は、大倉邦彦が創った大倉精神文化研究所がある山、ということです。元の地名は太尾町(ふとおちょう)でしたが、2007~2009年にかけて大倉山一丁目~七丁目となりました。東横線の駅名はずっと古くて、1932年に太尾駅から大倉山駅に変わりました。この年が公に大倉山と言われ出した始まりです。
 駅名を変えるときの議論の中に、太尾の漢字は難読で「たお」と読まれてしまうとか、「ふとお」と聞いたら横浜港の埠頭(ふとう)を連想してしまうという意見がありました。「たお」と読む地名なら、愛媛県西予市の田穂、山口県岩国市と周南市の峠、長崎県五島市の田尾がありますが、実は太尾を「たお」と読む地名はありません。
 太尾の語源は、鶴見川の氾濫で大倉山や大曽根の平地が水没したときに、丘の形が動物の太い尾のように見えたことから名付けられたといわれています。太尾(ふとお)地名なら、千葉県鴨川市と兵庫県姫路市にもあります。
 一方、大倉山は全国にあります。一番有名なのは、冬季五輪の会場になった北海道札幌市の大倉山でしょう。大倉喜七郎が無名の山にスキーのジャンプ台を建設し、1932年に大倉シャンツェと名付けたことに始まります。1970年頃に大倉山ジャンプ競技場に改造され、大倉山の名が定着しました。市街地を一望できる景観が有名です。
「くら」とは崖や谷の地形を表す言葉なので、大倉山は山の名前としてポピュラーです。大蔵山と表記されるものを含めると、宮城、新潟、栃木、富山、石川、滋賀(古城山の古称)、兵庫、鳥取、島根(枕木山の古称)、山口、鹿児島などの各県にあります。
 筆者は、標高45mの大倉山の山頂に毎日登って、大倉山公園の中にある大倉山記念館で仕事をしています。全国で一番低い大倉山かも知れないと思っていたら、兵庫県神戸市の大倉山公園は標高41m、東京都大田区の大倉山公園は標高15mの丘でした。なんと、全国に3ヵ所ある大倉山公園としては、港北が一番の高所でした。
 神戸の大倉山は大倉喜八郎の別荘だったところです。大倉喜八郎・喜七郎男爵父子はとても有名でしたから、大倉邦彦は生前からよく親戚と間違えられていたそうです。実は全く無関係です。
 続きは次回に。(S.H)

2014年2月9日雪の記念館坂から.jpg2014年2月9日、雪の記念館坂から駅前・みなとみらい方面を望む。
ある方が「大倉山ジャンプ競技場のよう」と言った景色です。

(2022年7月号)

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