第95回 大倉山エーゲ海フェスティバル
- 2024.09.15
文章の一部を参照・引用される場合は、『大倉山STYLEかわら版!』(令和6年9月号)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。
横浜最大級のお祭りである新横浜パフォーマンスは、1991年に始まり今年10月(5日・6日開催予定)で30回目を迎えます。実は新横浜よりも前に、大倉山でも大きなお祭りが開催されていました。大倉山エーゲ海フェスティバルです。皆さんは覚えておられるでしょうか。
大倉山駅の西口商店街は、再開発工事を経て1988年に大倉山エルム通りに生まれ変わりました(第10回参照)。フェスティバルの第1回は、そのお披露目を兼ねて同年7月21日から8月7日まで開催されました。会場は、エルム通りに加えて大倉山記念館、港北公会堂、大綱中学校、歓成院など地域全体に広がる大規模なお祭りでした。
大倉山記念館のデザインであるプレ・ヘレニック様式は、地中海東部のエーゲ海に栄えたクレタ文明・ミケーネ文明の建築デザインを基本としており、エルム通りもそのデザインを基本コンセプトにして再開発されました。そこで、そのイメージに縁がある池田満寿夫、佐藤陽子夫妻を招きました。池田満寿夫は、絵画、版画、彫刻など多方面で活躍した芸術家ですが、1977年に『エーゲ海に捧ぐ』で芥川賞を受賞し、翌年に同名映画の監督をしました。その映画とタイアップしたジュディ・オングの「魅せられて」も、大ヒットして話題になりました。年配の方は良くご存知でしょう。佐藤陽子は、著名なヴァイオリニストで声楽家、エッセイストとしても活躍された方です。
会期中には、大倉山記念館ギャラリーで「池田満寿夫〔イメージの軌跡〕展を催し、8月1日には記念館ホールで「佐藤陽子+池田満寿夫おしゃべりコンサート」も開催しています。この日は、ギリシャからアテネ市副市長やアテネ・エルム通り代表らを日本に招き、日本側からも70人が出席して記念館ホールで姉妹提携の調印式が行われました。また、大曽根商店街では樽町中学校のブラスバンドによるパレードも行われました。
エーゲ海フェスティバルの会期中は、連日多彩な催し物が実施されました。前年の1987年から始まっていた大倉山ライトアップフェスティバルも、期日を7月31日~8月7日に設定してフェスティバルに連動させて、大道芸や記念館前庭での野外劇なども催されました。8月3日の仮面仮装行列は、記念館から出発し、大倉山駅-エルム通り-大綱中学校へと練り歩きました。港北公会堂ではマンガ映画フェスティバルを開催し、大綱中学校校庭での盆踊りもフェスティバルに組み込まれました。
翌1989年の大倉山エーゲ海フェスティバル(7月22日~8月6日)では、ギリシャに縁の深い日本の7市町村が集まり、第1回エーゲ海村サミットを開催しています。
1991年の第4回では、港北公会堂で夏休み子供映画大会と俳優市川右太衛門の講演会を開きました。右太衛門の息子で同じく俳優の北大路欣也氏は、テレビ朝日系列のドラマ「事件」に主演しており、2012年の「事件15」以降は毎回大倉山記念館が横浜地方裁判所の設定で使われています。再放送をご覧になった方も多いことでしょう。
大倉山エーゲ海フェスティバルは1992年の第5回まで続けられました。(SH)
大倉山エーゲ海フェスティバルのプログラム。1990年の冊子を探しています。