第96回 マンガに描かれた大倉山
- 2024.11.15
文章の一部を参照・引用される場合は、『港北STYLEかわら版!』(令和6年11月号)を確認の上、その書誌情報を典拠として示すようお願いいたします。
本紙の配付区域が広がったことに合わせて、コラムタイトルを「大好き!わがまち」に変更いたしました。これからもよろしくお願いいたします。
前回は大倉山エーゲ海フェスティバルを紹介しましたが、1992年の第5回プログラム冊子を見ると(写真参照)、大倉山記念館で「ニャロメの神話展〈赤塚不二夫の世界〉」という展示会を開き、大倉山商店街イベント第1会場ではペットと一緒に温泉旅行があたる「ニャロメ猫大集合」というコンテストを開催しています(写真参照)。商店街の古老の方に伺うと、赤塚不二夫本人を招いてトークショーも開催したのだそうです。
なぜ大倉山で赤塚不二夫なのか、その関係が気になるところですが、調べていくと長谷邦夫「売れる店・売れない店 大倉山タウン物語」というマンガがありました。長谷邦夫は漫画家で、赤塚不二夫がデビューする前から交友があり、長年にわたり赤塚のブレーン役をしていたそうです。
このマンガは山本良一原作、大川照雄監修で、1988年9月~1990年7月まで22回にわたって業界誌『缶詰時報』に連載されました。大川照雄は元県の商工指導センター商業部長で、山本良一は大倉山の花々亭という和菓子屋の主人、2人はエルム通りへ改造したときの仕掛け人だったようです。エルム通り商店街をモデルにしたフィクションと謳っていますが、当時の様子が良く分かるマンガです。国会図書館のデジタルコレクションで読めますが、単行本にはなっていません。
エルム通りとマンガの係わりといえば、大倉山を舞台とした小林尽『夏のあらし!』(全8巻、スクウェア・エニックス、2007~2010年)があります。1巻142頁に図書館として描かれた建物や、7巻110頁の建物はどう見ても大倉山記念館です。6巻7頁には大倉山駅が描かれています。このマンガは、2009年にはテレビアニメ(全26話)にもなり、エルム通り商店街では「夏のあらし!の舞台は大倉山」のキャッチコピーで、タイアップイベントを開催しました。取材をしていた筆者は、わざわざ広島から来場した方と会いました。
大倉山が舞台になったと思われる作品としては、雑誌『なかよし』に連載していた秋元奈美『ミラクル☆ガールズ』(全9巻、講談社、1991~1994年)があります。著者が第5巻で「舞台は、じつは横浜なんです。(どこがだといわれそうですが)なぜ横浜かというと、私が育った街だから」と書いています。舞台が大倉山とは断定しにくいのですが、小倉山中学校とか、登場人物には大乗寺という苗字の人がいます。テレビアニメにもなっていて、小倉山駅が出てきます。
新井英樹『宮本から君へ』(全12巻、講談社、1990~1994年)では、主人公の宮本浩が横浜に生まれ育って(2巻69頁)、どうやら実家は大曽根辺りにあるらしく、大倉山公園北側の坂道らしき風景や大倉山記念館としか見えない建物が8巻と12巻で何度か出てきます。また、クラスメイトの家は菊名駅(7巻214頁)の近くにあります。
作品の舞台ではありませんが、大倉山記念館の建物が描かれた作品もあります。加倉井ミサイル『うつろ舟』(全4巻、一迅社、2004~2005年)では、主人公が通う京都芸術大学付属高校の校舎として、1巻53頁以下に大倉山記念館そっくりの建物が計10回登場します。(SH)
1992年大倉山エーゲ海フェスティバルの冊子より